機関紙「いわて労連 2017年11月号      

●安倍9条改憲阻止の運動を大きく広げよう/17総選挙で「市民+野党」が前進●くらしネットが消費税増税反対の要請/●大熊座●安心して暮らせるまちを〜第3回岩手地域課題研究交流集会●4年連続プラス勧告〜県人勧●憲法守るたたかいを〜国民救援会第39回県本部大会●じん肺キャラバン岩手県行動●核兵器禁止条約批准する政府を〜ヒバクシャ国際署名宣伝●労働条件改善を!LUメタルワークス分会結成!●建交労が地域で話題に〜建交労ダンプ統一行動●岩泉をめぐるバスツアー〜いわてパ臨連秋のつどい●歴史的判決!日本を変えるたたかいを!労働契約法20条裁/判を支える岩手の会第3回総会●ニュースフラッシュ●主張●めもあーつ194●川柳

1面
安倍9条改憲阻止の運動を大きく広げよう/17総選挙で「市民+野党」が前進

 
10月22日投票で行われた総選挙では、自公がわずかに議席を減らしましたが、希望の党、日本維新の会を含めた改憲勢力が衆議院の4分の3を占めました。一方で立憲野党は、立憲民主党、日本共産党、社民党の3党が総数で改選前議席を増加させました。安倍9条改憲阻止へいっそうの運動強化が求められます。

 いわて労連は立憲主義回復、戦争法廃止の実現のため、「市民と野党の共闘」実現を重視して総選挙に取り組みました。
 選挙の結果、改憲勢力が国会議員の多くを占めましたが、これは小選挙区制度という欠陥による架空の多数に過ぎません。世論の多くは安倍内閣を信任しておらず、9条に自衛隊を加える「加憲」にも反対が多数を占めています。
 秋闘では改憲阻止、アベ雇用改反対を重点に取り組みを進めています。「憲法を語る人」を職場でつくり、学習を強めることを提起しています。引き続き、改憲発議を許さない世論をつくるために運動を継続・強化していきましょう。世論を大きくするためにも、安倍9条改憲NO!全国市民アクションが呼びかける「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」、いわゆる「3000万署名」に取り組みましょう。11月6日には、「9条改憲にNO!学習集会」(戦争させない・9条壊すな岩手の会主催)を開催します。そして12月10日には3000万署名を推進する岩手の会を結成して、運動を大きく広げていきます。学習集会や岩手の会結成集会に全県から結集して、職場・地域から憲法守れの運動を広げていきましょう。

「9条改憲にNO!学習集会」
日時 11月6日(月)  @13時半〜15時半、A18時半〜20時
場所 岩手県公会堂26号室
内容 学習講演
「9条改憲NO!今こそ、市民が立ち上がるとき」(仮)
講師 高田健氏(全国総がかり行動実行委員会共同代表)
主催 戦争させない・9条壊すな岩手の会
「3000万署名推進岩手の会結成」(仮)
日時 12月10日(日)午後
会場 サンビル7階大ホール

憲法改正に対する世論調査の動向【自衛隊明記】
読売新聞(10月12日)
賛成 35.0%
反対 42.0%
答えない 23.0%

時事通信(10月22日出口調査)
賛成 36.2%
反対 30.3%
どちらともいえない 33.3%

朝日新聞(10月23〜24日)
賛成 36.0%
反対 45.0%
その他・答えない 19.0%


くらしネットが/消費税増税反対の要請
 いわて労連や県消団連などで構成する「暮らしネットワークいわて」は総選挙にあたって消費税増税に反対する要請を行いました。岩手一区候補者の事務所(自民党、共産党、6日時点では民進党)を10月6日に訪問して要請しました。
 要請項目は「2019年10月からの消費税増税は中止すること」「税の集め方を、消費税に頼らず、直接税中心、応能負担の原則をすすめること」「税金の使い方を、国民の命や暮らし、子どもの教育、保育など、生活を支える医療や子育てを優先すること」の3項目です。
 政府は19年10月からの消費税増税を前提に使い道の議論をしていますが、そもそも増税自体が問題です。引き続き、税金の集め方、使い方を見直して、消費税増税ストップの運動を強めることが重要です。

大熊座
 
「もり・かけ疑惑に緑のたぬき」今回の解散・総選挙が終わって皆さんはどう見ていますか。結局、「何も変わらないじゃん」ってがっかりしていませんか。確かに、選挙結果は、自民党が公示前と同数の議席を確保し、公明党と併せて与党が3分の2を占め、安倍政権が継続することに。政権交代をめざしていた希望の党は、改選前の議席を7減らし、立憲民主党が15議席から55議席へと躍進しました。共産党は9議席後退、維新は3議席減、公明も5議席減です▼市民と野党の共闘が成功した北海道では12小選挙区のうち5選挙区で野党統一候補が勝利し、比例を含めた道内20議席のうち8議席を野党統一候補が占めています。新潟では6選挙区のうち3選挙区で勝利し、沖縄では基地建設反対のオール沖縄の統一候補が4小選挙区のうち3選挙区で勝利しました▼岩手県内では、どの小選挙区も野党統一候補とはなりませんでしたが、共産党・社民党・自由党の選挙協力で3区の小沢一郎氏(無所属)が当選しました▼結局、民進党は希望の党と立憲民主党と「無所属の会」に3分裂。しかも参議院は民進党が残るという状態。安倍内閣の疑惑隠し、解散権私物化にあおられて、野党共闘に逆流が持ち込まれましたが、立民・共産・社民3党と無所属の会で共闘が発展するでしょう。それにしても、比例でわずか33%の得票率の自民党が議席全体の61%を占めるという、民意のゆがんだ小選挙区制は1日も早く廃止して貰いたい。全議席が比例代表なら自民党は今より130議席も減り、逆に立民・共産・社民が68議席増となりますから。(こ)


2面
安心して暮らせるまちを/第3回岩手地域課題研究交流集会
 
10月7日、盛岡市・サンビルを会場に、「わたし☆まちフォーラムinいわて2017」(第3回岩手地域課題研究交流集会)が開催されて、約100人が参加しました。岩手地域総合研究所(いわて労連も加盟)が主催しました。
 午前中の全体集会では「基礎データから見た岩手の現状と課題」と題して基調報告が行われました。井上博夫理事長(岩手大学名誉教授)が「概観 岩手の経済〜産業・雇用・まち〜」について、佐藤嘉夫副理事長(岩手県立大学名誉教授)が「岩手の暮らしの特徴と教育、保健・福祉の課題」について、それぞれ報告しました。その後、「自治とまちづくり」、「仕事・雇用・産業」「くらし・保健・福祉」「子どもの貧困」の4つの分科会に分かれて、レポートをもとに討論が行われました。
 第1分科会の「自治とまちづくり」では、陸前高田市の災害公営住宅で自治会づくりの支援をしてきた岩手大学特任研究員の船戸義和さんが、被災地のコミュニティづくりの課題について報告しました。自治体合併の中で、どのように住民主体のまちづくりを進めるのか2本の実践レポートも報告されました。
 第2分科会の「仕事・雇用・産業」の中野盛夫・盛岡市職労委員長が指定管理者制度について、橋基・いわて生協労組委員長が生協で働くパート労働者の現状について、村田浩一・農協労組書記長が農協の職場と労働者の状況についてそれぞれ報告して、自治体や協同組合の労働者の状況や課題を話し合いました。
 最後にまとめの集会が行われ、各分科会から報告をして話し合われた内容を共有しました。

憲法守るたたかいを/国民救援会第39回県本部大会
 
10月28日、盛岡市内で日本国民救援会第39回岩手県本部大会が開催されました。
 はじめに特別講演として上山信一弁護士が「憲法をめぐる情勢と新たなたたかい」と題してお話しました。上山弁護士は「安保法制の論議では憲法学者の9割以上が反対したのにそれを無視して強行し、改憲の議論になったら6〜7割の憲法学者が自衛隊を違憲というのは失礼だ、などと言って改憲理由を説明する。ダブルスタンダードだ」と首相の姿勢を批判し、総選挙結果をふまえて改憲に向けた動向を分析して「世論調査では自衛隊の憲法明記は国民の賛同を得ているとはいえない」としました。そして、改憲発議を止めるための運動の強化と、憲法に対する理解を広げる「知憲」の取り組みの重要性を強調しました。
 県本部大会の討論では、民商・禰屋裁判のたたかい、共謀罪法案反対のたたかいや、映画「母」の上映運動の推進、組織拡大に向けた取り組みなど、各支部の取り組みの報告が行われました。提案された方針と予算・決算、役員体制が承認され、来年の創立90周年に向けて改憲阻止、組織拡大などが意思統一されました。金野耕治・いわて労連議長らが来賓あいさつを行いました。

じん肺キャラバン岩手県行動
 
10月3日、第28回なくせじん肺全国キャラバン岩手県行動が行われました。いわて労連から角掛洋一幹事(いの健県センター事務局長)も参加して、岩手労働局、岩手県などと要請・懇談が行われました。
 岩手労働局での懇談では、「岩手県内のトンネル工事は40カ所。査察などで指導もしている」との回答でした。要請団は、「通知してからの査察ではなく予告なしの査察を」と求めました。
 また、36協定の開示請求では時間外労働時間が黒塗りされている問題を指摘しました。じん肺・アスベスト診断・治療する病院の確保と、医師の研修、病院検査機器への補助を要請しました。
 岩手県要請では「県発注トンネル工事は4カ所、勤務シフトについては8時間労働になるよう指導して、8時間にできない理由も聞いている」という回答でした。
 アスベスト問題では「調査の結果、公営住宅でのアスベスト使用はなし。公営施設調査基準を1000uまで下げて調査している」と回答しました。
 昨年、いの健県センターが要請した際には「2000uが基準」としていましたので、前進していることが確認されました。

4年連続プラス勧告/県人勧
 
10月13日、岩手県人事委員会は、県知事と県議会議長に対して、今年の県職員の給与についての勧告を行いました。
 岩手県公務共闘は8000筆を超える署名を提出して、震災復興などで奮闘している県内公務労働者を励まして、地域経済の活性化や県内労働者全体の賃上げを後押しする積極的勧告を求めていました。その力もあって、月例給・一時金ともに4年連続のプラス勧告となりました。
 給料表では公民較差が537円、0・15%あるとして、国と同様に行政職(一)で初任給及び若年層に1000円の引上げ、その他はそれぞれ400円の引上げを基本に勧告しました(給与改定額512円、0・14%)。一時金では、民間より0・03月下回るとして0・05月引上げ年間4・35月にしましたが、国の人事院勧告(4・40月)を再び下回る結果となりました。
 初任給は民間大卒190、148円に対して行(一)1―25で180、800円と△9、348円、民間高卒154、937円に対して行(一)1―5で148、400円の△6、537円で、依然として較差が生じたままです。愛媛県の17人事委員会勧告では「全国的には過半数の都道府県は上級初任給基準が1級29号となっていること、民間初任給との均衡を図り有為な人材を確保するため初任給基準を引き上げる」としています。
 初任給基準を早急に引上げ公民較差の解消をおこなうことが求められています。

国連軍縮週間/核兵器禁止条約批准する政府を/ヒバクシャ国際署名宣伝
 10月27日、盛岡市大通で国連軍縮週間に呼応して「ヒバクシャ国際署名」を呼びかける街頭宣伝が行われました。県被団協と県原水協が呼びかけました。金野耕治・県原水協代表理事(いわて労連議長)や下村次弘・県被団協事務局長がマイクで訴えました。26筆の署名が寄せられました。「自分の子どもたちのためにも核兵器のない世界を」と20代の女性が署名を寄せていきました。
 日本政府が26日に国連に提出した核廃絶決議案に対して、「核兵器禁止条約」についての言及がないことや、核不拡散条約(NPT)再検討会議で合意された「核兵器国の明確な約束」などの文言を削除、核兵器使用の非人道性に対する表現も後退させたと、各国から強い批判が寄せられました。27日の裁決では賛成144、反対4、棄権27となり、昨年と比べて賛成が23票減り、棄権が10増えました。共同提案国も昨年の109カ国から77カ国に減少しました。核兵器禁止条約に背を向ける日本政府の姿勢を一日も早く改めさせることがより重要になっています。
 10月6日にも「6・9行動」が県原水協などにより取り組まれ、「ヒバクシャ国際署名」が街頭で呼びかけられました。


3面
労働条件改善を!/LUメタルワークス分会結成!
 
滝沢市のメタル・ワークス(金属加工業)で働く労働者が、処遇改善や、働きがいのある職場を目指して立ち上がり、いわてローカルユニオンの分会として労働組合を結成しました。労働相談をきっかけに、組合結成に向けて学習会や打ち合わせを重ねて9月30日の結成大会を迎えました。
 大会では、いわて労連・金野耕治議長と、いわてローカルユニオン・新田英則執行委員長らが激励あいさつ。いわて労連加盟組合からの多数の激励メッセージも紹介されました。
 当面の方針と要求、役員体制などを確認。10月2日に結成通知を行い、10月15日に団体交渉を行って成果も勝ち取りました。引き続き交渉を続けていきます。 

建交労が地域で話題に/建交労ダンプ統一行動
 
10月5〜6日、建交労ダンプの組織拡大統一行動が行われました。
 建交労県本部の高橋委員長と昆書記長をはじめ、全労連オルグ、宮古地域労連が参加。5日は釜石市内で、翌日は宮古市役所前やダンプ労働者が集まる青野滝駐車場で宣伝し、2日で約70部のチラシを配布して対話しました。組合員から「久慈地域でも単価交渉を行っている建交労が話題になっている」という話も。引き続き宣伝を強めていきます。

岩泉をめぐるバスツアー/いわてパ臨連秋のつどい
 9月26日、いわてパート臨時労組連絡会の秋のつどい「岩泉をめぐるツアー」が行われました。生協労組、農協労組やローカルユニオン、青年ユニオンなど約30人が参加。昨年の台風10号で大きな被害を受け、復興に向けて頑張る岩泉町を訪れようと企画されました。
 龍泉洞やうれいら商店街を散策し、泉金酒造を見学しました。岩泉町職の佐々木委員長から、復興の現状を報告してもらいました。「生活橋」再建の支援カンパを手渡しました。

歴史的判決! 日本を変えるたたかいを!/労働契約法20条裁判を支える岩手の会第3回総会
 
10月28日、「労契法20条裁判をたたかう郵政原告団を支える岩手の会第3回総会」が県民会館会議室で開催され、約30人が参加しました。
 はじめに佐々木良博弁護士が9月14日に東京地裁で出された東日本訴訟の判決の意義を話しました。佐々木弁護士は「これまでの判決の流れを大きく変える歴史的な判決であり、今後の非正規労働者の闘いの武器となる判決」と強調しました。
 その後、西日本訴訟の原告である岡崎徹さん(近畿地方本部執行委員、広島中央郵便局)が支援の訴えを行いました。「弁護団と支援者の励ましが力になっている」、「この裁判が全国に広がれば日本が変わる」と強調。「21世紀の公民権運動だと思っている。雇用差別という身分制度のようなものを次の世代に残したくない」として、来年2月21日に出される西日本・大阪地裁判決に向けてさらなる支援の強化を力強く訴えました。討論では「学習が力になる。今日の訴えを職場のみんなに知らせたい」など積極的に受け止められました。
 東日本訴訟は高裁に闘いの場が移ります。引き続き支援を強めていきましょう。

NEWS フラッシュ
 ●最賃ディーセントワーク宣伝
 9月29日、最賃ディーセントワーク宣伝を盛岡市内で実施しました。
 ●映画「母」盛岡上映会
 9月29日に映画「母」の上映会が県民会館中ホールで行われて、全体で1000人を超える方が鑑賞に訪れました。
 ●岩手自治労連第78回定期大会
 9月29〜30日、岩手自治労連第78回定期大会が開催されました。
 ●盛岡労連第29回定期大会
 10月11日、盛岡労連第29回定期大会が開催されました。
 ●岩手県国公第61回定期大会
 10月21日、岩手県国公第61回定期大会が開催されました。
 ●建交労岩手県本部第19回
 定期大会
 10月22日、建交労岩手県本部第19回定期大会が開催されました。
 ●二戸地域労連第14回定期大会
 10月24日、二戸地域労連第14回定期大会が開催されました。
 ●胆江労連第20回定期大会
 10月25日、胆江労連第20回定期大会が開催されました。
 ●福祉労組第46回定期大会
 10月28日、岩手県社会福祉労組第46回定期大会が開催されました。
 ●両磐労連第28回定期大会
 10月31日、両磐労連第28回定期大会が開催されました。

主張
過労死防止月間/働きやすい職場を実現しよう
 
17秋闘と同時に、総選挙の取り組みが各職場ですすめられたと思います。選挙結果からも、「改憲阻止」、「アベ雇用改革反対」の運動はますます重要になっています。職場改善の闘いをすすめながら、2つの重点課題を力強くすすめていきましょう。
 NHK記者の過労死が公表されて、改めて過労死問題がクローズアップされています。県内でも深刻な人手不足の状況が続いており、過労死の認定申請や労働災害発生件数が増加傾向にあります。長時間労働を是正して「働きやすい職場」を実現することは労使ともに待ったなしの課題です。一方で安倍政権のすすめる「働き方改革」は、「残業代ゼロ法」や過労死ライン容認の「時間外労働上限規制」であり、長時間労働の抑制どころか過労死を助長しかねません。秋の臨時国会での成立が狙われていましたが、解散総選挙により、年明けの通常国会での闘いになる見通しです。アベ雇用改革阻止に向けて「過労死と職場における差別の根絶を求める国会請願署名」を職場・地域で大きく広げましょう。
 11月は過労死防止法に基づく過労死防止月間です。「働くもののいのちと健康を守る岩手県センター」(事務局・いわて労連)は、第3回「過労死について考えるつどい」として「いの健フォーラム わたし、はたらきやすい職場を求めます」を11月23日(木・祝)、13時半〜16時、岩手県公会堂26号室で開催します。岩手県中小企業家同友会の菊田専務も参加するシンポジウムで、本当の意味で「働きやすい」職場の実現のために、働く者と事業者がともに考え合う企画です。参加は無料です。
 過労死のない、働きやすい職場を実現するために、多くの皆さんの参加を呼びかけます。

4面
めも・あーつ194
韓くに(からくに)の白き太陽/演劇 「SOETSU」劇団民藝/作・長田育恵 演出・丹野郁弓
 今年60周年を迎えた盛岡演劇鑑賞会の383会例会は日本の民藝運動の創始者・柳宗悦(やなぎむねよし)の運動を形作った朝鮮時代の30年を描いた大作だった。
 1914年、朝鮮の小学校の訓導をしていた浅川伯教(のりたか)が、当時、柳が預かっていたロダンの彫刻を見るために李朝陶磁器を手土産に訪れた。その陶器のもつ温もり、無垢な白、高貴さに深く感動し、朝鮮工藝の美にのめり込んでゆく。
 1919年、1910年の韓国併合に始まった日本の統治化に「朝鮮独立万歳」と叫んで抗議した万歳事件(3・1独立運動)勃発。日本政府の激しい武力鎮圧に、生活の全てが破壊されていく様を見過ごすことができなかった柳は、朝鮮の人々を擁護する「朝鮮人を思ふ」を読売新聞に掲載。さらに朝鮮の文化を守るべく朝鮮民族美術館設立を計画。一躍、危険人物とされた。当時の朝鮮総督・斉藤実の1500円のカンパ、李王朝の宮殿の一部を提供してもらい開館にこぎつけたが3・1独立運動の収拾の命をうけ着任したばかりの斉藤実は、独立を認めないという大前提のもとに、新聞発行停止の解除など打開策をうちだした。美術館への協力も思惑があってのこと。柳の思うこの地だけの虐げられ耐えてきた哀しみの白は、いくつもの矛盾を孕んでいた。
 朝鮮で最も親しかった宿屋の女将・明珠が、娘の夫等が企てた斉藤実の暗殺の身代わりとなって捕らえられ放った言葉は「柳先生のその言葉は、私たちを傷つけ憐れみ哀しに縛りつけている。よく見て!私たちは生きている。この白は…」。朝鮮で大きな影響を受け、親友だった、浅川伯教の弟、巧(たくみ)の葬儀に彼の残した白磁の水滴をみて、柳はこの白は太陽の白だと知った。朝鮮の人々は下を向くことなく生きてきたその白だということを。激動の時代にあって「美」というきわめて個人的な感覚を民藝運動へと昇華させていった力は色褪せることはない。
 「民藝とは、名もなき工人たちの手によって生まれる品物をいい、民衆的工芸『民藝』である。『民藝』が美しいのではなく美しい物が生まれる土壌なのである」。
※太陽の見える部分を光球といい、地球上の万物を育てる白色の光と熱の源。
(デジタル大辞泉) 
(久保克子)

川  柳


アベノミクス闇夜に消えた三つの矢
                            巷多朗

ミサイルの発射のたびに踊るアベ
                            野の一枝

「図に乗ると滑る」が百合の花言葉
                            瀬川重哉

気合よし枝野に拡がる護憲の輪
                             拓  庵
年金者組合盛岡支部