機関紙「いわて労連 2017年8月号      

●最低賃金をいますぐ1000円に!/最賃アップ・アピールで248分のロングラン宣伝●8時間働けばまもとに暮らせる社会を/最賃ディーセントワーク宣伝●大熊座●「核兵器禁止条約」が成立!/核兵器廃絶の世論を広げよう●ヒバクシャ国際署名いっせい宣伝●市民と野党の共闘で、アベ暴走政治をやめさせよう!●県議会請願の結果●共謀罪廃止、アベ政権退陣せよ!19日行動●明るい会の総会を開催●サマーフォトギャラリー告知●医療研●TPP11、日欧EPA許すな●教組共闘キャラバン●消費税増税許すな!街頭宣伝●九州大水害救援街頭カンパ●日本母親大会in岩手の実行委員会●NEWSフラッシュ●主張●世捨て人(ローカルユニオン)●めもあーつ191●川柳

1面
最低賃金をいますぐ1000円に/最賃アップ・アピールで248分のロングラン宣伝

 
6月29日、いわて労連、いわてパート・臨時労組連絡会などは、貧困と格差を解消して賃金の底上げを実現するために、最低賃金の大幅引き上げを求めて、宣伝や県、労働局への要請を行いました。岩手地方最低賃金審議会は8月7日にも改正答申を行う予定です。

 「いわて最賃アップアピールデー」として、いわて労連は最低賃金引上げを訴える行動を毎年実施しています。
 県雇用対策労働室には、県として最低賃金の大幅引き上げなどを国や関係機関に働きかけるよう求めました。その後、県庁記者クラブで記者会見を行い、最低生計費試算調査の30〜50代世帯の結果を発表して、最低生計費には地域間格差がほとんどないという調査結果を強調しました。
 11時からは盛岡市大通で、岩手県の最賃716円と当面の目標の1000円との差、284円にちなんで284分のロングラン宣伝を行いました。約30人が参加して、岩手地方最賃を直ちに1000円以上に引き上げることを求める署名や、シール投票を訴えました。
 署名に寄せられた一言欄には「とても安すぎます。だからみんな都会に行っちゃうんです」、「岩手に来てパートの時給が低くてびっくりした」などの声が寄せられました。署名は116筆寄せられ、この日の夕方に岩手労働局に届けました。
 シール投票には230人が応じて、1000円台が55%、1300円台が14%、1500円台が23%という結果でした。青年層が積極的に署名やシール投票に応じて、これまで以上に最低賃金引き上げへの関心の高まりや切実さを実感しました。

8時間働けばまもとに暮らせる社会を/最賃ディーセントワーク宣伝
 
7月14日、いわて労連、いわてパート・臨時労組連絡会、いわてローカルユニオンは、盛岡市クロステラス前で最賃ディーセントワーク宣伝を実施して、最賃引き上げ署名やシール投票を呼びかけ、多くの青年等がシール投票になどに応じました。
 7月25日に中央最低賃金審議会が目安を発表しました。3%の引き上げ水準で、今年もA〜Dランク毎に格差をつけた答申が行われました。これでは2020年までに1000円としている政労使合意にも届かず、地域間格差は広がるばかりです。
 7月26日に、職場や街頭で集めた3000筆を超える署名を岩手労働局に届けて、大幅な引き上げを要請しました。岩手地方最賃審議会は7月31日と8月7日に本審を行って今年の答申を審議します。8月1日にはいわて労連加盟組合からも意見陳述を行う予定です。

大熊座
7月2日に行われた東京都議会議員選挙で自民党は前回の59議席に対し23議席へと大幅に議席を減らし歴史的大敗となりました。一地方議会とは言え、日本の人口の1割以上が住む首都東京。都民は、自民党政治に厳しい審判を下しました▼安倍政権は、特定秘密保護法の強行、集団的自衛権行使の閣議決定、戦争法の強行、そして共謀罪と「戦争する国づくり」への暴走を続けてきました。そして5月に、自衛隊を憲法9条に明記し2020年施行をめざすとまで述べました。森友学園・加計学園など自分の友人や支持者に便宜を図る国政の私物化や稲田防衛大臣の言動などの問題もありました▼安倍政権に対する国民の怒りは、7月23日に行われた仙台市長選挙でも如実に表れ、野党が支援した民進党前衆院議員の郡和子さんが自民・公明推薦候補を破って初当選しました。東京都民・仙台市民の皆さんに心からお祝いの拍手を送ります▼「安倍一強」と言われ、衆参国会議員の3分の2を占める自公与党におおさか維新など補完勢力が加わって、国会も国民も軽視し幾度も強行採決を繰り返した安倍内閣。いま、内閣支持率は3割を割っています。「安倍辞めろ」コールに対して「あんな人たちに負けるわけに行かない」と秋葉原で演説した安倍首相は、素直に負けを認め、国会を解散して国民に信を問うべきです▼秋の臨時国会に長時間残業を容認する労基法改悪や残業代ゼロ法など労働法制改悪が狙われています。日欧EPAや原発再稼働、沖縄米軍基地建設など「軍需・企業利益優先」から「労働者・国民の福祉優先」に政治を変える時です。  (こ)

2面
「核兵器禁止条約」 が成立!/核兵器廃絶の世論を広げよう
 7月7日、核兵器禁止条約が国連で122か国の賛成で採択され、史上はじめて核兵器が禁止されることになりました。ヒバクシャを先頭に長年続けてきた核兵器禁止、廃絶の運動が結実しました。核廃絶の世論をさらに広げて日本政府に条約批准を迫りましょう。

 7月9日、核兵器廃絶を訴える「6・9行動」が盛岡市大通で行われました。県原水協と県被団協が共同で、ヒバクシャ国際署名を呼びかけました。
 県被団協の下村事務局長等がマイクを握って「ヒバクシャの願いだった核兵器禁止条約が国連で成立したことを歓迎する。ヒバクシャ国際署名を広げて、この条約に背を向ける日本政府を追い詰めよう」と呼びかけました。
 8月7〜9日に行われる原水爆禁止世界大会・長崎大会に参加する青年らも宣伝に参加しました。署名やシール投票を呼び掛けて、核兵器廃絶を訴えました。
 はじめて世界大会に参加する三田村さんは「核兵器禁止の世論を広げて、世界大会を成功をさせるために頑張りたい」と決意しています。今年の世界大会には県内の職場・地域から40人を超える代表団になります。
 核兵器禁止条約は9月20日から各国での批准署名がはじまります。日本政府に署名を迫るためにも、世界大会を成功させて、ヒバクシャ国際署名を職場・地域で広げていきましょう。

ヒバクシャ国際署名いっせい宣伝
 
7月15日、ヒバクシャ国際署名をすすめる岩手の会はいっせい宣伝を盛岡市内の生協4店舗前で行いました。あわせて34人が参加して、署名が271筆寄せられました。

市民と野党の共闘で、アベ暴走政治をやめさせよう!/中野晃一さん講演会
 7月2日に行われた東京都議会議員選挙で、自民党は改選議席の半分以下という歴史的大敗となり、アベ暴走政治への怒りの声がはっきりと示されました。
 そうした中で、7月22日、盛岡劇場メインホールで「もうやめさせよう!アベ政治 市民連合の中野晃一さん講演会」が行われました。悪天候の中でしたが350人が参加しました。30人の県内著名人が呼びかけた実行委員会(74団体)が主催しました。呼びかけ人を代表して加藤善正・県生協連顧問があいさつしました。
 県内の立憲野党4党に参加を呼び掛けたところ、自由党県連・佐々木順一幹事長、日本共産党岩手県委員会・斉藤信副委員長、社民党県連合・小西和子代表が参加をして、あいさつしました。民進党県連・黄川田徹代表はメッセージを寄せ、紹介されました。
 講師の中野晃一さん(上智大学教授)は、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」を結成して、安保法制廃止の運動をリードしてきました。講演では、市民の要請にこたえて、もともと違う政党である野党の共闘が実現したことは「すごいこと」と強調して、一日も早く安倍政権を倒そうと呼びかけました。
 講演の参加者からは「お話を聞いて元気が出た」などの感想が聞かれ、今後の運動に確信を深める講演会となりました。

県議会請願の結果
 
7月7日、岩手県議会本会議が行われて、いわて労連などが提出した請願が審議されました。復興県民会議と県社保協が提出した「被災者の医療・介護利用負担の免除の継続」を求める請願は全会一致で採択されました。
 いわて労連など10団体が共同で提出した「森友・加計疑惑の真相究明を求める請願」も審議されて、自民、県民クラブ(佐々木努議員除く)が反対しましたが、賛成多数で採択されました。
 県生協連や県共同センターなど、戦争させない・9条壊すな!岩手の会の事務局団体は3月議会で「共謀罪の廃案を求める請願」を提出していましたが継続審議になっていました。その後、6月に国会で共謀罪法が強行採決されたため、この請願を取り下げて、新たに「共謀罪廃止」を求める請願を提出しました。
 しかし、自民、県民クラブ(佐々木努議員除く)、創成いわて(五日市王議員除く)、公明党、無所属の吉田けい子・臼澤勉議員が反対して不採択となりました。

共謀罪廃止、安倍政権は退陣を!/19日行動など
 
7月19日、盛岡市内で戦争させない・9条壊すな!岩手の会が19日行動・盛岡夜デモを行い、150人が参加しました。共謀罪の廃止と、「森友・加計」疑惑など国政の私物化の安倍政権退陣を求めて、盛岡市内をデモ行進しました。
 7月9日には、平和憲法・9条をまもる岩手の会が盛岡市内で9の日宣伝を行いました。憲法違反の戦争法と共謀罪の廃止を訴えてチラシを配布して署名を呼びかけました。

明るい民主県政をつくる会が総会
 7月23日、盛岡市内で「明るい民主県政をつくる会」が総会を開催しました。
 総会では、市民と野党の共闘の発展にふさわしく、明るい会の構成も発展させていこうと確認されました。新会長に尾形文智さん(民医連)が選出されました。

 9月号の紙面で、SummerPhotoGalleryを企画します。読者のみなさんの写真を募集しますので応募してください。
 作品は印画紙に印刷して、いわて労連へ郵送して頂くか、メールでデータをお送りください。
 応募の締め切りは8月25日です。
 第21回いわて労連機関紙コンクール作品募集中です。
 〆切り8月25日です。

3面
第42回岩手県医療研究集会/患者と働くものの人権を大切に
 
岩手医労連は、7月8〜9日、花巻市「ホテル志戸平」を会場に、第42回岩手県医療研究集会を開催しました。
 岩手県社会保障協議会も共催して、広く県内の民主団体等にも参加を呼びかけて、約150人が参加しました。
 今回の記念講演は、「患者さんの人権、私たちの人権〜人権感覚をみがこう」をテーマに、岡山県労働者学習協会の長久啓太事務局長が行いました。医療労働者として、患者さんの人権を大事にしつつ、自分たちにも人権があり、それぞれ尊重しなければならないことを学びました。特に、フランスの貧困指標に「1年間に1週間以上の旅行をしたか」があることが紹介されると、会場がどよめきました。
 その後、看護、精神、介護、保育、基礎講座などに分かれ、各単組から持ち寄られたレポートを中心に発表、交流が行われました。
 2日目も、合同学習会や、分科会が継続されました。また、夜は懇親会が行われ、講師を含めて交流を深めました。

TPP11、日欧EPA許すな
 
7月11日、いわて食農ネットは盛岡市内でTPP11ヶ国協定や日欧FPA合意に反対し、戸別所得補償制度の復活署名行動を行いました。いわて労連や農協労組から15人が参加しました。
 岡田現三・農民連事務局長と村田浩一・県農協労組書記長がマイクを握り、「急浮上するアメリカ除きのTPP合意を許さず、TPPにプラスしてチーズなど乳製品の関税を撤廃する日欧EPAに地域から反対の声をあげていこう」と市民に訴えました。
 70代の女性は「安倍首相は本当にウソつきだと思う。早くやめてほしい。野党には頑張ってほしい」と怒って署名しました。60代の女性は「岩手の農業を守ることは大事だ」と署名に応じました。同じ場所でアンケート活動をしていた高校生たちも快く署名に協力。炎天下にもかかわらず、30分で11人の市民が署名に応じました。

就学支援の拡充を!/教組共闘キャラバン
 
7月25日、高校生の就学支援保障などを求めて、教組共闘北海道東北ブロックキャラバンとして、県への要請が行われました。ブロックの各代表と、県内からいわて労連・金野議長、岩手私教連・工藤委員長、岩手自治労連・小野寺中央執行委員長らが参加しました。

消費税増税は許さない
 
7月24日、消費税廃止県各界連絡会が盛岡市内で「イエローキャンペーン」を行い、消費税増税中止を求める署名宣伝を行いました。
 政府は消費税10%増税を2019年10月まで延期しましたが、「中止を」と市民が署名に応じました。

九州大水害救援/街頭カンパ訴え
 
7月11日、いわて労連などが盛岡市内で九州大水害救援支援街頭カンパを呼びかけ、21531円が市民から寄せられました。全て赤十字を通じて被災者に届けます。
 別途、組織内の支援カンパは全労連を通じて被災地に届けます。

NEWS フラッシュ
 ●岩手県農協労組/  第89回定期大会
 
7月7日、岩手県農協労組が第89回定期大会を花巻市内で開催しました。
 ●教育をすすめる会が総会とシンポジウム
 
7月8日、教育をすすめる会が第11回総会とシンポジウムを盛岡市内で開催しました。
 ●いわて生協労組が定期大会
 
7月28日、いわて生協労組が定期大会を盛岡市内で開催しました。 
 ●いわてローカルユニオンが定期大会
 
7月29日、いわてローカルユニオンが第19回定期大会を盛岡市内で開催しました。

魅力的な分科会がたくさん!!/第63回日本母親大会in岩手に参加を
 
いよいよ8月19〜20日に盛岡市内で開催されます。19日にはたくさんの魅力的な分科会が準備されていますので主なものをご紹介します。
 この他にもありますので、詳しくはチラシをご覧ください。いわて労連HPにも掲載中。

分科会の紹介
8月19日(土)12時半〜17時 参加費 2500円 
若い世代分科会のみ1000円 (岩手大学会場)
E見えにくい貧困
 ブラックバイト、奨学金、 子ども食堂、就学援助、 給食費無償化 
 笹山尚人(弁護士)
J医療・介護を国民の手に―沢内村のたたかいに学ぶ
 日野秀逸(東北大学)
 橋典成(沢内いのちネット)
N「働き方改革」で働き方は良くなる?
  助言者 金野耕治 (いわて労連議長)
P女性のくらし 働き方、政治参加

 柴田真佐子 (日本婦人団体連合会)
R憲法施行70年―安保法制、共謀罪、市民と野党の共闘
 小澤隆一(慈恵医大)
(マリオス18階会場)
D地域づくり・学校づくり
 鈴木重男(葛巻町長)
F登校拒否・不登校 ひきこもり
 北館恭子(ポランの広場)
(マリオス市民文化ホール会場)
特別企画
23第1部 啄木、賢治と憲法を語る
 第2部 対談
 石川啄木記念館館長と宮沢賢治記念館副館長
 小森陽一(東京大学)
 森 義真(石川啄木記念館館長)
 牛崎敬哉(宮沢賢治記念館副館長)
 森 美沙(詩人・宮沢賢治研究家)
(アイーナ会場)
@若い世代の企画 行列のできるしゃべくりカフェ
 ※参加1000円  49歳以下まで
I農業・漁業・地域を共同に力でよみがえらせよう
 高橋弘美(JA岩手)
 盛合敏子(岩手県漁連)
 内澤祥子(いわて生協)
24男女平等の扉を開けた岩手の女性たち
 浦川陽子
(第34回日本母親大会岩手県役員)
 植田朱美(女性史研究家)
 大沢栄子(若年定年制裁判原告)
 山田勝也(元岩手銀行従組)
 佐藤せつ子(元高校教師)
(オプション企画)
きたがわてつと歌おう
 8月19日(土)午後6時から
 盛岡市民文化ホール・小ホール
 参加費 1000円


主張
過労死促進の労働法制改悪を阻止しよう
 
安倍政権はこの秋に召集される臨時国会で、労働基準法改正法案を成立させようとしています。「裁量労働制の対象拡大」や「高度プロフェッショナル制度の創設(労働時間規制の適用除外)」や、「月100時間もの残業上限の法定化」等の労働基準法改悪は阻止しなければなりません。
 安倍首相は「長時間労働を是正する」「不合理な待遇差をなくす」などと国会で演説しましたが、政府がすすめようとしているのは「残業代ゼロで働かせ放題の合法化」、「月100時間、年960時間もの残業の合法化」、「正規と非正規の賃金格差を容認する名ばかり同一労働同一賃金法整備」、「解雇の金銭解決制度の創設」などです。
 「残業代ゼロ法」などについて「連合」が、安倍政権と経団連とで「政労使」の三者合意を行う動きがありましたが、組織の内外からの強い批判にあって撤回しました。「年104日の休日確保」程度の法案修正では健康被害を防ぐことにはならず、労働時間規制外しの本質は何も変わりません。
 残業代ゼロ法案は、使用者に課されるべき雇用責任、労働時間管理責任を軽減して、「残業代ゼロで働かせ放題・過労死しても自己責任」となる働かせ方をもたらすものです。過労死の根絶、長時間労働の是正を願う多くの労働者とその家族の思いに真っ向から反する政策です。
 全労連は、全労協などと共同で構成する「雇用共同アクション」として労働法制改悪の撤回を求める「過労死と職場における差別の根絶を求める国会請願署名」に取り組みます。いわて労連も大規模に取り組みをすすめます。8月31日には、いのちと健康を守る岩手県センターと共同で学習会を開催します。「過労死促進の労働法制大改悪阻止」の世論を大きくして、国会への法案提出を断念させるまで安倍政権を追い詰めましょう。
 長時間労働を根絶し、8時間働けばまともに暮らせる社会をつくるために力を合わせましょう!


4面
めも・あーつ191
戦争を体験していなくても戦争を知ることはできる。 戦争を体験していないから戦争を進めているひともいる。
「指の骨」 2014年第46回新潮新人賞受賞作品  高橋弘希・著/青森県十和田市出身
 
この作品を手にとることになったのは、友人の16歳上のお兄さんが亡くなる少し前に話した、唯一の戦争体験と同じだったからだ。
 私は招集され、赤道を越えた、地図でみると細長い小さな半島だが幅三百キロもある巨大な島の密林にいた。当初は順当に進軍を続けていた。配給は切り詰められていたが、西の米軍基地を占領すれば食料を確保できる、そういう戦いをしていた。同じ隊にいた優秀な級友藤木が後方からの銃撃を受けあっけなく死に、もう一人の級友古谷も頭を半分もがれて死んだ。部下思いの田辺分隊長は、銃剣をにぎったまま死んだ。自分で掘ったタコ壺の中に、撃たれた左肩を三角布でしばり身を潜めていた。明くる朝、陽光で気をとりもどした所を友軍に助けられ、野戦病院に送られた。病院の患者の多くはマラリアに罹っていたが、特効薬のキニーネの空瓶が山になって部屋の隅にあった。病院の中庭であった顔中包帯をまいた眞田。妻を亡くし、よちよち歩きの男の子を残し招集されていた。2人でマンゴウを探しに密林にはいったり沢で魚を捕ったりした。彼は現地のことばが少し分かっていて、お陰で食料にありついた。が間もなく全身に紅斑と高熱で死んだ。左手首を失い、本当は左利きなんだよと笑いながら右手で一本の鉛筆で見事な風景画を描いていた清水もマラリアで死んだ。私は野戦病院での死と隣あわせの日々に死が日常になっていた。哀しみはなく心身に空洞ができたようだった。
 ある朝、病院は転進することになった。退却という言葉はなかった。歩けない患者に自決のための手榴弾を渡し、少しの荷物を背負い、誰と戦うでもなく一人また一人と倒れ朽ちていく。歩けど歩けど黄色い道に果てはない。私の視界がついに横になった。背嚢にはアルマイトの弁当箱に入った、眞田の指の骨と認識票がある。私が白骨になってもアルマイトは腐らない。きっとよちよち歩きの子に届くだろう。私は21歳。
 
「指の骨」の作者は、受賞当時34歳。   (久保克子)

   川  柳
岩盤に加計専用の穴あける
                                                                         巷多朗

モリとカケそば用人に甘いタレ
                                                                         野の一枝

こんな人となどと色なすあんな人
                                                                         瀬川重哉

故横田綾二さんに捧げる句
議会では誰もがうなずく道示し
                                                                         拓  庵
年金者組合盛岡支部